まな板の選び方
調理器具の中でも、毎日の料理に欠かせないのが「まな板」。
皆さんが今お使いのまな板は、どのようなまな板ですか?
近年では材質やデザインの異なった、様々な種類のまな板が販売されています。
どのまな板がいいのか、迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。
今回はまな板の種類ごとの特徴と選び方についてご紹介いたします。
1. プラスチック製・ゴム製・木製まな板の特徴
まな板には大きく分けて、プラスチック製・ゴム製・木製とあります。
一昔前までは、まな板といえば木製のまな板でしたが、
今はプラスチック製のまな板が主流です。
最近ではゴム製のまな板を使用しているという方も増えています。
まずは、プラスチック製・ゴム製・木製それぞれの特徴を見てみましょう。
プラスチック製
メリット
- 軽くて手軽に扱える
- お手入れが楽
- デザインが豊富
- 価格が安い
- 漂白剤を使用できる
デメリット
- 刃当たりが悪く、包丁が傷みやすい
- 安定性に欠け、食材やまな板自体が滑りやすい
- 弾力性がなく、手や腕が疲れやすい
- 包丁の刃でまな板に傷がついて、プラスチックのカスが体内に入ってしまう恐れがある
- 切るときの音がうるさい
お手入れ方法
- 食器用合成洗剤とスポンジで洗う
- 汚れや臭いが気になる場合は台所用漂白剤を使う
ゴム製
メリット
- 水切れが良く、乾きが早い
- 傷がつきにくい
- お手入れが楽
- 汚れやカビが付きにくい
デメリット
- 重い
- 食材が滑りやすい
- 熱に弱い
- デザイン性に乏しい
お手入れ方法
- 食器用合成洗剤とスポンジで洗う
- 汚れや臭いが気になる場合は台所用漂白剤を使う
木製
メリット
- 刃当たりが柔らかく、包丁の刃を傷めにくい
- 食材の余分な水分を木が吸収してくれるので、食材が滑りにくい
- 切るときの音や木の香りが心地よい
- 弾力性があるので手や腕が疲れにくい
- 表面に包丁傷がついても、木の復元力によりある程度戻る
- 木本来が持つ抗菌作用により、清潔に保てる
- 削り直しをすることで美しい状態を回復し、長く使うことができる
デメリット
- 手入れをしなければカビが発生する
- 安価なものを購入すると、反ったり割れたりする
- 漂白剤を使用できない(使用しない方がよい)
お手入れ方法
-
粉末クレンザーとたわしで洗う
(食器用合成洗剤に含まれる界面活性剤はまな板の黒ずみの原因となるため) - 黒ずみや臭いが気になる場合は輪切りにしたレモンでこする
- 熱湯や消毒用アルコール(エタノール)を吹きかけることで黒ズミやカビを未然に防ぐことができる
特定の商品ではなく、あくまで一般的なまな板の材質毎にメリット・デメリットとお手入れ方法を簡単にまとめてみました。
わかりやすいように表にしました。
どのまな板にも一長一短ありますが、
使う方の環境やライフスタイルによって求める機能は変わってくると思います。
衛生面が気になるという方は、まな板を複数用意して
食材ごとに使い分けるというのも良い方法です。
毎日料理をされる方におすすめしたいのは、木製まな板です。
まな板の相棒となる包丁にも優しく、使いやすさも抜群。
お手入れも案外簡単で、長く使い続けることができます。
プロの料理人でも木製まな板を使っている方は多くいます。
しかし、木製まな板といっても木の種類は様々。
木材ごとに性質や使い心地は変わってきます。
ここからは木の種類ごとの特徴をご紹介します。
2. 木製まな板に使われる木の種類と特徴
檜(ヒノキ)
建築材の最高級品とされる檜。
耐久性が高く、水にも強いのが特徴です。
木肌が美しく、木目が緻密で弾力性が高いです。
刃当たりが柔らかく、乾燥に強く水切れに優れることからまな板材としても多く利用されています。
防虫効果・抗菌作用にも優れていて、雑菌が繁殖しにくいので、木製まな板を初めて購入するという方にもおすすめです。
ヒノキ特有の香りがあるので、ニオイに敏感な方は注意が必要です。
檜葉(ヒバ)
耐久性や水への強さに大変優れた性質をもつ檜葉。
地域によりアスナロ、アテなど様々な呼び名がありますが、青森に分布する青森ヒバが一般的に有名です。
抗菌性をもつヒノキチオールを多く含むため、まな板としても高い抗菌効果が期待できます。
適度な硬さで刃当たりがよく、まな板としての機能性は抜群ですが、材が稀少なため高価でもあります。
ヒノキ同様、特有の香りがあるので、ニオイに敏感な方は注意が必要です。
ヒノキやヒバの抗菌性については、抽出したヒノキオイルがMRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)の増殖を抑制するという研究結果が国立大学より発表されています。
銀杏(イチョウ)
適度に油分を含み、水はけがよく、古くからまな板の材料として最適といわれている銀杏。
木質が均一で柔らかく復元力が高いので、まな板材の中でも最も刃当たりがよいとされています。
表面に傷が付きにくく、反りやゆがみも少ないです。
また、銀杏の木にはフラボノイドが含まれているので、まな板に臭いが付きにくいです。
ただし、檜に比べると抗菌作用が弱いため、しっかりと洗い、乾燥をさせておかないとカビなどが発生する可能性があります。
材によってはギンナン臭がする場合もあります。
桐(キリ)
国産材では最も軽くて柔らかい桐。
刃当たりが非常に軽く、乾きが早いのが特徴です。
材が柔らかいため、表面に傷がつきやすいです。
木製まな板の重さが気になるという方にはおすすめですが、その軽さゆえ安定性に欠けるという点では注意が必要です。
朴(ホオ)
比較的安価で手に入れやすい朴の木。
柔らかく、弾力性と柔軟性に富み、刃当たりが良いのが特徴です。
心材は青緑色、辺材は灰白色でまな板によってははっきりと2色に分かれているものもあります。
他にもまな板に使われてる木材はありますが、よく使われているのが上記の5種類です。
わかりやすいように表にしました。
同じ木製まな板でも、木材によって性質が異なることがお分かりいただけたと思います。
ここからはさらに、木製まな板を選ぶ際のポイントを、
木の性質についての説明を交えながらご紹介します。
3. 木製まな板を選ぶ際のポイントと木の性質
木製まな板において、理想的なまな板の要素とは何でしょうか。
- 弾力性と柔軟性に富み、刃当たりがいい
- 水切れが良く、乾きが早い
- 抗菌効果がある
- 復元力が高く、表面に傷が付きにくい
- 反りにくく、ゆがみにくい
- 耐久性がある
- 適度な重さで安定性がある
使いやすさやお手入れのしやすさを考えると、
上記の要素にあてはまる木製まな板が理想的なのではないでしょうか。
では、その理想的なまな板はどのように選べばよいのでしょうか。
前章でご紹介した木の種類から選定するのはもちろんですが、
同じ木の種類でも、木の育った場所や木材の部位によってその性質は異なります。
ここからは、まな板を選ぶうえで覚えておきたい、
木の性質についてご紹介します。
板目と柾目
丸太をカットする際、年輪の目に対して板材を伐り出しますが、その位置によって木目が変わります。
木目には大きく分けて、「板目(いため)」と、「柾目(まさめ)」があります。
板目
丸太の中心から離れた位置で、中心部に対し平行に伐り出すと、年輪が平行ではなく山形や筍(たけのこ)形の木目になります。
これを板目といいます。
反りや狂いが起こりやすいですが、強度面で優れています。
板目材は水分を吸収しづらいため、酒樽や醤油樽などに使用されています。
柾目材に比べると安価で、湾曲したランダムな木目は木材の存在感を際立たせ、柔らかくも力強い印象をを感じさせてくれます。
柾目
丸太の中心に向かって直角に伐り出すと、年輪が平行(縞模様)な木目になります。
これを柾目といいます。
反りや狂いが少なく、水切れがいいのでまな板にもおすすめです。
ひとつの丸太から取れる柾目材は少なく、板目材よりも高価です。
夏目と冬目
木目には、春から夏にかけて成長する部分「夏目(なつめ)」と
秋から冬にかけて成長する部分「冬目(ふゆめ)」があります。
木の断面を見ると夏目は厚くて色が薄く、冬目は薄くて色が濃く、それが交互に出来ているのがわかります。
夏目は成長速度が早いため、木の密度が薄くなります。
夏目は柔らかく、水分が浸透しやすいです。
冬目は成長が遅いため、木の密度が高くなります。
冬目は硬く緻密な構造で、水分を通しにくいです。
まな板の場合、夏目と冬目の硬さの差が大きいほど、包丁の刃が傷みやすくなります。
そのため、木目が細かく均一な柾目材の方が包丁の刃当たりは優しくなります。
赤身(心材)と白太(辺材)
木には赤身(あかみ)=心材と白太(しらた)=辺材があります。
丸太の芯に近い真ん中の部分が赤っぽい色の部分を赤身、その外側が白っぽくなっている部分を白太といいます。
木は、中心より外側に年輪を重ねていくことで大きくなっていきます。
つまり、木の外側にいくほど新しくて若い細胞なのです。
木の細胞は若いうちは水分を通して柔軟ですが、時間が経つと水を通さずだんだん硬くなり、細胞の中に樹脂成分がたまっていきます。
まだ樹脂成分がたまっていない若い部分が白太、樹脂がたまった成熟した細胞が赤身なのです。
赤身の細胞にはさまざまな樹脂成分が含まれていて、虫に食べられにくくする防虫成分や、腐りにくくする防腐成分が豊富なため、白太よりも腐りにくいのです。
なお、木によっては赤くない心材もあります。
朴の木の心材は青緑色、辺材は灰白色で独特の色をしています。
その木が育った環境や品種により、色や性質まで違ってくるのです。
ここまで木の性質についてお話してきましたが、
まな板に最適な材とは、どのようなものなのでしょうか。
まな板は柾目の心材が最適
「柾目の心材がなぜ最適か?」
それは、木製まな板に要求される成分が満たされているからなのです。
柾目材は仮道管が真っ直ぐで、水切れがよく乾きやすいので、まな板に最適です。
木目が細かく均一なため包丁の刃当たりがよく、包丁にも優しいのです。
反りや狂いも少ないです。
また、心材には抗菌・防虫成分が含まれており、雑菌が繁殖しにくく、耐久性が高いので長く使い続けることができます。
柾目の心材だけを使用したまな板はなかなか貴重ではありますが、
一枚持っていれば、毎日のお料理の心強い相棒になってくれることでしょう。
ここまで、まな板となる木材の種類や性質についてご紹介してきましたが、
つぎは木材からまな板をつくるときの加工方法についてご紹介します。
4. 一枚板(無垢材)と接ぎ板(横接ぎ材)
一枚板
一枚板はその名の通り、一枚の木材で作られたもので、無垢材とも呼ばれます。
水分の吸収や乾燥が自然でスムーズに行われるので、耐久性に優れ長持ちします。
ただし、表と裏で乾燥時の収縮率が違うため反りやくなります。
一枚板は貴重で、高価です。
接ぎ板
接ぎ板は小さな角材を繊維方向を平行にして貼りあわせて板としたもので、横接ぎ材とも呼ばれます。
無垢材の一枚板よりも反りにくいですが、接合部に割れや歪みが発生する場合もあります。
一枚板に比べると安価で、特に柾目材の場合は接ぎ板のものが多いです。
理想は柾目材の一枚板ですが、それには樹齢300年以上の天然木で住宅の柱材に使うような木材を使わなければなりません。
そうなると、非常に高価で手に入りにくいのが現状です。
一般の使用に置いては接ぎ板のまな板でも充分使用に耐えることができるので、選択の幅を広げるのも一つの方法です。
5. サイズと形状
続いては、まな板のサイズと形についてのお話です。
色々な大きさのまな板がありますが、一体どれくらいの大きさがよいのでしょうか。
また、一般的なまな板は長方形ですが、丸型や正方形などのまな板もあります。
どのような形のまな板を選べばよいのでしょうか。
ここからは、サイズや形の選び方についてご紹介します。
まな板のサイズ
まな板は、キッチンの天板やシンクの大きさにあわせて選びましょう。
また、自身がよく作るお料理や、使い回し、家族構成なども考慮して選ぶことも大切です。
収納場所の確認も忘れずに行いましょう。
目安としては、下記の通りです。
- 1人暮らし:15~20cm×30cm程度
- 2人暮らし:20cm×40cm程度
- 3~4人暮らし:25cm×45cm程度
厚さは、木製まな板の場合は3cm以上のものがおすすめです。
安定感があり、反りにくく、削り直しをして長く使えるようにするためです。
まな板の形
長方形のまな板は、キッチンのシンクの大きさの規格に合わせて作られているものが多く、キッチンの作業スペースを無駄なく活用することができます。
一昔前までは定尺サイズ(幅と長さが1:2の寸法)が定番でしたが、今は幅広サイズの方が需要が高いようです。
丸型や正方形のまな板は奥行があるので、切った食材が飛び散りにくく、まな板を回して色々な食材を一度に切ることも出来ます。
そのまま食卓に出してもおしゃれです。
取っ手付きのまな板は、切った食材をお鍋に入れる際など、まな板ごと持ち上げるのに便利です。
フックや紐で掛けられる穴つきのまな板は、収納スペースをとらないのでキッチンが狭い場合はおすすめです。
</1</1家族のライフスタイルに合わせて、サイズや形を選ぶとよいでしょう。
番外編:「まな板とカッティングボードの違いとは?」
まな板とカッティングボードは似ているようで実はその用途や使われている木材は別物なのです。
まな板は主にキッチンで野菜や肉・魚を切る用途で使用します。
包丁が傷まないように、ヒノキやイチョウなど、柔らかい材質の木材が使われています。
カッティングボードは食卓でパンやチーズなどをブレッドナイフでカットする用途で使用します。
食卓で使うものなので、デザインもおしゃれなものが多く、ギザギザの刃でも傷が付かないように、山桜やメープル、オリーブなど硬い材質の木材が使われています。
まな板はお料理に欠かせない必需品ですが、それとは別に、おしゃれなカッティングボードが一枚あれば、料理の幅が広がり、食卓が華やかになりそうです。
6. まとめ
今回はまな板の種類ごとの特徴と選び方についてご紹介しました。
皆さんがこれからまな板を選ぶ際に、少しでも参考になれば嬉しいです。
お気に入りの一枚を見つけて、毎日のお料理が楽しくなりますように。